まじめちゃんブログ

社会人 x 学生

【2】新型コロナウイルスの治療法

【論文タイトル】Therapeutic options for the 2019 novel coronavirus (2019-nCoV)

【著者】Li & Clercq

【年】February 2020

【ジャーナル】Nature reviews drug discovery

 

現在、新型コロナウイルス (COVID-19) によって全世界が混乱状態にあります。

 

今回は

新型コロナの治療法ってあるの?

という世界の問いに答えたNature Review誌による論文をご紹介します!

 

新型コロナは中国の武漢で初めて確認されて以降、全世界に感染が拡大しています。

致死率は2%以下で弱毒性ですが、感染力は比較的高そうです。

 

結論から言ってしまうと、新型コロナに特化した治療薬はまだ存在しません。

 

一般的に新薬開発は10年以上かかるのものなので、新型コロナ医薬品はしばらくは登場しないと考えたほうがよさそうです。

 

しかし、朗報です!

 

本論文では「既存薬が新型コロナ治療に有効である」可能性を述べています。

 

どうやら、過去SARSやMERS治療を行った際に効果的だった薬が、新型コロナに対しても有効である可能性があるらしいです。

具体的には、エイズを引き起こすHIVウイルス、C型肝炎、インフルエンザに対する薬が効果を示したそう。

 

では、一体なぜこれらの薬が新型コロナに対して有効である可能性があるのでしょうか?

 

新型コロナウイルスは、ウイルスのなかでも一本鎖RNA (+) ウイルスと呼ばれます。

 

RNAはヒトでいうDNAのようなものでウイルスの情報をコードしています。RNAエンベロープと呼ばれるタンパク質に覆われて移動し、別の細胞に感染します。

この特徴やゲノム性状が、新型コロナとSARS、MERSの間で似ているため、SARSやMERSで効果を示した薬は新型コロナにも有効だと考えられるそうです。

 

上記の候補医薬品は、RNAウイルスに共通するタンパク質やウイルス-宿主間の相互作用を抑制するものが多いようです。

 

例えば、本論文で紹介されたファビピラビルインフルエンザ、エボラ、黄熱病、ノロウイルスなど幅広い感染症ウイルスの抑制に効果を示すようで、RNA依存性RNAポリメラーゼをターゲットにしています。

 

他にもペグインターフェロンアルファ-2aや2bなどはヒトの先天性の抗ウイルス反応を活性化する役割があり、応用が期待できるそう。

 

論文中では、他にもレムデシビル、Galidesivir、ジスルフィラム、ロピナビル、リトナビル、Griffithsin、クロロキン、ニタゾキサニドなどの医薬品が紹介されていました。

 

さらに、一部の医薬品は新型コロナですでに臨床試験の段階にあるそうです。

医療の現場は思った以上にスピーディーに動いているようですね。

 

新型コロナウイルスの治療法がはやく確立されてほしいものです。

 

日常的な手洗いうがいをお忘れなく!

管理人はアルコールを持ち歩いて、台所とかも以下の製品でこまめに除菌しています。

 

 

 

【引用】

https://www.nature.com/articles/d41573-020-00016-0?from=singlemessage

 

 

 

【1】原核生物と真核生物の境目のアーキアを分離

【タイトル】Isolation of an archaeon at the prokaryote–eukaryote interface

【著者】Imachi et. al.

【年】January 2020

【ジャーナル】Nature

 

この論文はタイトルそのまま、「原核生物と真核生物の境界のアーキアを分離」したそうです。

 

これはね・・・とんでもないことですよ!

 

真核生物の起源は「アスガルド古細菌」と呼ばれる系統群であると言われ、このアスガルド古細菌は真核生物と類似したゲノム特性を有します。(真核生物にのみ見られる、タンパク質レパートリーを持っているそう。)

 

しかし、微生物のほとんどは難培養であり、分離可能なものは1%にも満たないと言われています。アスガルド古細菌も同様に分離例がなく、その生態や生理に関する知見がありませんでした。

 

ところが、この論文では10年もの月日を費やして、深海からこの古細菌を分離したと言うではありませんか!

 

著者らは、深海堆積物中の微生物を独自のバイオリアクターで2,000日以上培養し、集積しました。分離した菌の名は ’Candidatus Prometheoarchaeum syntrophicum’ MK-D1株。

本菌は嫌気性の小さい球菌だそうで、メタン生成菌と共生してアミノ酸などを分解し、生合成とエネルギー生産を行うようです。

 

非常に増殖が遅いために、分離に10年間という歳月を要したそう。

培養開始まで30~60日+最大密度に達するまで3か月なんて・・・よく培養し続けようと思いましたよね。

 

アスガルド古細菌は真核生物特有なオルガネラなどを保持する可能性があると考えられていましたが、本菌はオルガネラを有していませんでした。

その代わり、菌体外に複雑な突起を伸ばしているようです。

 

著者らはこの発見により、原核生物が真核生物に分岐する新しい進化モデル「entangle-engulf-endogenize (E3)」を提唱しました。

硫酸還元菌などと共生関係にあったアスガルド古細菌が、地球上に酸素が登場することによって好気性菌(のちのミトコンドリア)とも共生関係を結び、現在の真核生物に進化するという仮説です。

 

国立研究開発法人「JAMSTEC」で行われた研究のようですね。

 

今後の分離や発見で、この仮説がどうサポートされていくか注目です!

 

 

【引用】

Imachi, H., Nobu, M.K., Nakahara, N. et al. Isolation of an archaeon at the prokaryote–eukaryote interface. Nature 577, 519–525 (2020). https://doi.org/10.1038/s41586-019-1916-6